いろはにほへと


「!!!」



元々固まっていた茶髪の男が、益々身を固くする。






「いや、その…違うから、違いますから…」





まだ何も言っていないのにあたふたしだした男に構う事無く、人差し指で自分の前髪を示した。






「前髪、目に掛かってるんですね。」





「ちがいま………え?!」





なんだか親近感が湧く。




ちょうど目に掛かって邪魔だろうに、彼も私と同類なんだろうか。





他の人と、関わるのが嫌なんだろうか。



男の人は、あまり好きじゃない。


だけど、もしも同類なのだとしたら、この人は父のように優しい人だろうか。




「あ、危ないっ!!!」





少し、気が緩んだらしい。




男の声が聞こえたと同時に脚立がぐらついて、派手に倒れた音がした。




私の身体ももちろん傾いたし落ちたけど、平気だ。




何故なら、下にクッションが、じゃない、男の人が受け止めてくれたから。






「すみません…」





「大丈夫…?」






庭先にさっきまで居たのに、私が落ちる瞬間にここまで辿りつけるなんて、大した人だ。




余程、運動神経が良いのだろう。