八時からは花火を見てなにもかも新鮮で楽しかった。部屋に戻ろうとした時、タケ君が早紀を誘い散歩に出かける。肌寒い外を少し距離を置いて歩く。「今日は楽しかったね」ありきたりな言葉を交わしながら近くにあるベンチに座った。ドラマみたいな展開に早紀は告白されるような気がした。思った通りタケ君はベンチに置いていた早紀の手の上に手を乗せ、真っすぐ前を向いたまま「告っていい?」早紀は正直告っていいかと聞かれてダメってゆう人がいるのかと心の中で笑った。「うん。いいよ」不器用なタケ君。今まで見たことのない真面目な顔。「早紀といると落ち着くんだよね。友達としてじゃなく俺の女になってくれない?」コクりと頷いた早紀。仕事のことも忘れて返事を出してしまった。さっきよりは近づいた距離で部屋に戻る。ミキと二人になり、付き合ったこと、仕事のこと言おうか言わないか相談した。ミキは当然のように「言わないでしょ、普通。ばれないしさ」ミキの言い方はなぜかいつも説得力がある。言わないほうが、きっと幸せになれる。早紀はそう思い込んだ。めでたく付き合い始めた早紀とタケは時間のある限り会った。愛を深めた。青春ってこういうことなんだって、しみじみしていた。お母さんに彼氏ができたことを伝える。お母さんも仕事で成績を残して生活も安定してきたのをきっかけに、一年言い寄られてきていた会社の上司とめでたく付き合ったらしい。二人で苦労してきて二人で幸せを掴んだ。早紀の給料が五十万と安定してきた頃。母の日にワンピースをプレゼントした。彼氏とデートするときに着てねと手紙を添えて。お母さんは本当に嬉しそうに自分の身体にワンピースを合わせて鏡を見ていた。鏡を見ているお母さんを見て、なぜか、もうお母さんに嘘つきたくないと思ってしまった。真剣な顔をして仕事のことを有りのまま正直に話した。驚いた様子で「それでいいの?」と戸惑いながらいってきた。仕事はもう慣れたし、この仕事をしてから生活も充実してると話した。お母さんは納得してくれた。彼氏に仕事のことを話してないとゆうことも言った。せっかく掴んだ幸せを手放すなんてだめだよといい、必要な嘘もあると言ってくれた。お母さんの言葉で嘘を突き通すこと、貯金が目標額に達したらやめようと心に決めた。水曜日…。いつも指名してくれる森本さんが来る日。いつもと同じ八時に来た。森本さんの顔はいつもと違う。



