苦難を乗り越えて

妊娠…。早紀は毎月くるはずのものがこない。忙しくて不順になってるのかな。仕事をなによりも優先してしまった。二ヶ月経っても生理がこないのを心配して検査薬を試してみた。できてる?信じられなくて二回やってみる。やっぱりできてる。まず焦らずに病院いかなきゃ。半信半疑で病院に行き検査をしてもらう早紀。婦人科なんて初めて来た。なんて思いながら検査は終了した。尿検査などから確実に妊娠していた。幸せ…。幸せなはずなのにお店が今、忙しい時だ。でも早紀もそろそろ子供産まないと年には勝てない。早紀は一人で考えても答えがでなかった。タケ君の子を妊娠したと、告白。「お店のこともあるし、今は産めない」早紀がタケ君にそう話すと。「神様がくれた贈り物、大切にしないと」そのなんでもないような言葉で、でも頼れる言葉で早紀は、産むことを決めた。もう三十歳だし、今産まないと一生産めないかもしれない。早紀が仕事を少しくらい休んだところで、お店が回らないわけでもない。不安と期待が入り混じる中、妊娠生活開始。つわりがひどい。それでも仕事を出来る限り続ける早紀。タケ君や従業員に心配かけないように、笑顔で振る舞う。無理に無理を重ね、お店が落ち着いたと同時に倒れて入院。タケ君に頼るべきだったと後悔した。タケ君に「具合悪いのに無理させてごめん。何も気付いてあげれなくてごめん。」謝るタケ君に早紀は、心配かけてしまうのも愛なんだと気付いた。腹痛が続いて、出血が止まらない。お願いだから元気に産まれてきて。タケ君は仕事が終わると、毎日早紀に会いにきてくれる。お腹を撫でてくれたり、話しをして痛さを、まぎらわせてくれた。幸せ。このまま続いて。長い長い入院生活。妊娠三ヶ月から七ヶ月になっても、入院が続く。血圧も低く、先生からは「お母さんの命とお子さんの命、最悪の場合どちらを取りますか?」そんな選択を迫られた。早紀は赤ちゃんの命奪うなんて無理。ここまで育っているのに。早紀の命なんて惜しくないと思っていた。でもタケ君は違った「赤ちゃんは確かに可哀相だけど早紀の命は俺にとってはなくてはならない命なんだ。もし産まれてこれなかったとしても、また同じ命が宿るよ」とタケ君の目には少し涙が、にじんでいた。でも諦めない。絶対に産んでみせる。安静にして、祈るだけ。先生には「少しづつ良くなってるといわれ、九ヶ月に入って大丈夫そうなら産めるかもしれない」