共に過ごした日々…。風俗の仕事のこと、タケ君の子供のこと。問題があっても七年も一緒にいた。生活を共にした。でも七年も一緒にいても、お互い知らないことも沢山あった。今の気持ちだって知らない。タケ君に話しをする早紀。「タケ君と一緒にいても、幸せ感じられないし、タケ君には早紀より相応しい人がいると思うから、もう終わりにしよう」タケ君を傷つけないように、また自分も傷つかないように、言葉を選んで真剣に話してみる。タケ君は、本当に驚いて「俺の生活の仕方が早紀に不安を与えちゃったんだね」と言った。早紀は仕事で地方に行くことを伝えた。タケ君は、一年でも何年でも早紀を待っているといってくれた。もし、お互い、一年後に、やっぱり必要だと思えたら、二人が初めて出会った早紀の通っていた高校の前で、日にちと時間を決めて会う。そう約束をした。「三十分は待つ」「来なかったら諦める」と決めて別れた。早紀はタケ君の元に戻ることを前提には置かず、地方に行ってから、できたら違う恋をしようと思った。タケ君を忘れるために。いざ、仕事をしてみると、忙しさで恋なんてする時間もなかったけど、タケ君のことも忘れれるような気がした。「早紀先生」なんて毎日生徒に呼ばれて、仕事の楽しさをすごく実感できた。早紀が作ったネイルが、雑誌に載せてもらえるようになって、憧れの芸能人の手までもが早紀の作ったネイルで輝いている。一生懸命作った、世界に一つしかない手作りの爪が、世の中に出ていく。子供を育てているようだった。もうすぐ早紀は三十歳になる。結婚もしていない自分に気付いた時、タケ君との約束を思い出してしまった。一度愛した人は絶対に忘れられないんだと思った。約束の日は一週間後。地元の北海道に戻る予定だったけど、東京で、ずっと働いてくれないかとも言われている早紀。やりたい仕事をして、自分のお店を開きたいって夢もある。でもタケ君に、そんな早紀を支えてもらいたいなんて思うようになった。だけど、タケ君は東京には来てくれないかもしれないし、待ち合わせの場所にも来ないかもしれない。もし、来てくれたら勝手だけど、東京で早紀の夢のために支えてほしい。早紀にはタケ君が必要だった。離れてみてわかったこと。多忙なスケジュールの中、地元の北海道に向かう。飛行機の中で仕事をし、タケ君を思い出して話す言葉を頭に浮かべていた。



