男って本当に鈍感…。一日中朝から晩まで同じ車で尾行しているのに、全く気付かない。タケ君が仕事を終え車に乗り込む。真っすぐ家に帰って。そんな早紀の願いも虚しく。ミキの言う通り知らない女と会っている現場。楽しそうに、ご飯食べたりプリクラ撮ったりしている。早紀とは最近デートなんてしてくれないくせに。苛立ちつつも尾行を続ける。まるでストーカーだ。数分後。早紀とミキは自分の目を疑った。タケ君と女が入って行った所。看板にはホテルピース。ラブホテルだ。何がピースだ。ミキは正直ここまで予測はしていなかっただろう。自分の男でもないのに早紀と一緒になって泣ていた。涙も出なくなった頃。ミキが何もないふりして電話してみたら?と提案してきた。電話をする。少し長めの呼び出し音。タケ君は少し荒い息遣いで電話に出た。その息の荒さに積もり積もった苛立ちはピークを迎えようとしていた。頭に血が上り顔は赤面。ミキは「落ち着いて」と小さい声で言う。自分の信じていた男が知らない女とラブホテルに入って落ち着けなんて無理に近い。息遣いが荒いのだって、あんなことや、こんなことやってるからじゃん。最低。そう思いながらも必死で平然を装い「まだ帰ってこないの?」と聞いてみる。「仕事の打ち合わせをかねて飲み会なんだ」早紀が全部知っているのを、よそに嘘をつくタケ君。こいつ馬鹿だ。こんな奴と何年も付き合って、一緒に住んでたなんて早紀も馬鹿だ。家に帰ってタケ君の荷物をまとめようとする。荷物をまとめていて、今までの思い出が頭に浮かぶ。早紀は風俗で男相手に毎日してたんだ。一回の浮気くらい見逃すべきかな。でも早紀は仕事として割り切ってた。浮気されたのは初めてだし許せないけど、男は浮気する生き物だって職場の先輩が笑いながら話してた。男は浮気しても帰るべき場所にちゃんと帰る人が多いけど、女は浮気で済まない場合が多い。男が浮気するなんて遊びの一つだと言っていた。そんなことを思い出しているとタケ君が帰って来た。汚いものを見るように早紀は「今日はご飯いらないもんね」意味あり気に言った。「飲み会だったからね」軽く言い返すタケ君。普通の顔をして言えるタケ君が信じられなかった。こいつ馬鹿じゃないかとまで思ってしまった。浮気は浮気だし、なんて簡単に許せる程大人にはなれなかった。「飲み会ね。何を飲んだんだか」別れる気があれば何とでも言えただろう。