届かぬ声を、君に。




「なんで? 帰らないよ」


私は、きっぱりとそう言った。


「私に関わらないでって言ったでしょ?」



優花は、なっちゃんを少し睨みながら言った。



なんで舞香をここに連れてきたの、とでも言いたげに。



「優花、昨日もう私に関わらないでって言ったのは、心配をかけないようにでしょ? 


あんな風に突き放されたって、親友やめるつもりなんて全くないから」



優花は、またびっくりしていた。


多分、私が優花の病気のことを知っているとは思わなかったんだろう。


「お姉ちゃんが、教えたの?」


「うん」


なっちゃんの芯の強さには、改めて感心させられる。


優花に何度睨まれようが、表情一つ変えずに椅子に座ったままだった。


「舞香、お姉ちゃんから聞いたと思うけど、私アメリカに行くの。手術が成功したら、また日本に帰ってくる。でも、成功しなかったら.........」


多分、優花は今、とてつもない大きな不安と戦っているのだと思う。


突然、死ぬかも、なんて言われて。


手術が成功しなかったら、命はない、と言われて。



なんで、優花の苦しみに気づけなかったんだろう。