届かぬ声を、君に。





『もしかして、昨日も耳のことで公園でなんかされたの......?』


私は、おそるおそる聞いた。


『ああ、そうだ。同じクラスの奴に、いじめられてた』


彼は、手話がすごく上手かった。



い、いじめられてた?



『それ、大丈夫なの?』


『別に。もう慣れたし』



いじめられることに慣れるって......どういうこと?



私はそんな疑問を抱えながらも、話を続けた。



『名前、何ていうの?』



『俺の名前? 坂原 響也(さかはら きょうや)。お前は?』



『私の名前は、藤澤 舞香。よろしく』



私はにっこり微笑むと、弁当を食べ始めた。