「ねー何で颯? あんなぽっさーとした草食系男子の何がいいの?」
「……矢吹さんに堀北さんを憧れてること言わなければ良かった」
「なんでー?」
(めんどくさっ)
「毎回言いますけど、憧れてるだけで別に好きとかないんで、誤解を招くことしないでください」
「あれ、俺怒られた? 何か悲しいから颯に慰めてもらおっと」
ピッと社員証を玄関のリーダーにかざし、颯爽とドアを開けて駆けだす矢吹に、七海の朝の癒され度は急激に下落した。
いいもん。あたし堀北さんの隣だし───いつでもあの柔らかい笑顔に癒されるのは、同じ部署で隣の人の特権だ。
そう思うと、またニヤニヤが止まらなくなり、口許を隠すように何度も咳払いをした。

