一葉は周りに取り残された思いがして、ふと思い出した。
(そういえば私、これから生活する場所がない……)
一葉は今まで無理やり塞ぎ込んでいた不安が大きく膨れ上がるのを感じた。
まさか自分を斬った男の元へのこのこと帰るわけにはいかない。
そもそも土地勘のない一葉には帰り方すらわからなかった。
それも男の計算の内だったのか、一葉はいよいよ泣きそうになった。
(私、今……ひとりぼっちじゃない)
一葉は生き別れた弟の顔を思い浮かべた。
弟はいつも一葉の周りをうろちょろして、嬉しそうな顔をしながら名前を呼んでくれていた。
「あき……。 会いたいよ……」
上を向いて我慢をしていた涙が、ついに目から溢れてほおを伝う。
一度流れた涙はなかなか止まらないようで、何度拭っても次から次に溢れて止まらなかった。
「うっ……、っく……」
「失礼します……て、どないしたんどすか!? やっぱり傷が痛みはるん!?」
いつの間にか部屋へ入ってきた女が一葉の元へ慌てた様子で寄ってきた。
一葉はぶんぶんと首を振りながら涙を止めようと必死に拭う。
「どないしたんどすか……?」
女はもう一度一葉に問いかけると、その背をゆっくり優しく撫でた。
一葉の小さな背中を見て、女は困ったように眉を下げる。
この娘に一体何があったというのだろうか。
女には一葉が不憫で堪らなかった。
