お花は皿に乗せられている匙を取り、少しの粥を掬い上げふうと息を吹きかける。
するとそれを一葉の口元へ持っていった。
「…………」
「えっと……?」
一葉が戸惑っていると、お花は早く口を開けろとでも言う風に、匙を一葉の唇にちょんと当てる。
(食べさせてくれるってこと?)
一葉が恐る恐る口を開けると粥が運ばれてきたので、ぱくりと咥えて粥を受け取ると匙を離した。
口の中へ届いた粥は、とても暖かくて優しい味がした。
「美味しい……」
ほっとして一葉のほおが自然と緩む。
それを見たお花も少しだけほおが緩むようだった。
すべて食べ終えた頃には一葉のお腹は満腹になっていた。
一息ついてお花を見ると、お花は満足そうな顔をして立ち上がった。
お皿を下げに行くのだろう。
そばに置いてあったお盆を手にして襖の方へ向かった。
女と同じく丁寧な退室をして見せ、お花は部屋を後にした。
(結局あの子、一言も話さなかったな……)
無口なのだろうか。
そんな事を思いながら、一葉はそばにある障子を見つめた。
(ここ、どこなんだろう……)
閉じられた障子から外の様子は見えないが、なんとなく外がざわついてきたように思う。
外の様子を伺おうにも痛みに臆病になっている一葉には立ち上がることさえできなかった。
