「水織…大丈夫か…?」

そんな顔させるために、守ったわけじゃない。
だた、守りたくて。
オレは水織の頬に手を伸ばした。
冷たかった。

「大丈夫だから」
もう一度、言った。

水織が、微かに震えながら、自分の頬に触れるオレの手を、そっと撫でた。

あー駄目だ。そんなに見つめるな…。
そんな瞳で見るな…。
キス、するぞ…。
するぞ…するぞ…したいんだよ!

「おい、こんな時くらい自重しろよ」
ぐいっと腕を引かれた。
「ほら立てるだろ? これで血、拭け」
達夜ああああ…恨むぜえええ…。

「あ、ごめ、ごめんなさい」
水織は真っ青な顔で、手を引っ込めた。
オレなんかより、ずっとつらそうだ…。

「優沙、水織ちゃんだっけ? 車に連れてけ。
影伊の手当て、ちょっとしないと…いけない、から…」
達夜が、言葉を呑んだ。

不安色の水織を、達夜がみつめる。
オレの鼓動が、一瞬大きく、どきんと鳴った。

「…そんな顔するなよ。大丈夫だから。こいつが勝手にやったことだ。
それに、そんなに大怪我じゃないから、ね」
達夜にしたは、なんて優しい言葉を掛けたんだろうと思った。

優が、救急箱をテーブルの上に置いて、水織を連れて出て行った。

「どれ、ちょっと見せてみろよ…ああ、ちょっと切れてるな」

結局は、額を2センチくらい切ったのと、背中を打撲しただけだったが。
こんなもんはオレにとっても、達夜にとっても、大したことじゃなかった。