【5月の痛み】


斉藤達夜(たつや)。
オレの高校からの親友だ。

祖母がアメリカ人のクオーターで、9歳までアメリカで育った帰国子女。

見た目は日本人なんだが、酒に強く物怖じしない。
血は間違いなく流れてると思う!

達夜は、去年までこのあたりを馴らしている、暴走族の頭だった。
そんでもって、オレがバイトしてる事務所で働いている、斉藤優沙(ゆうさ)の兄だったりする。


オレの自宅で、達夜と飲んでいた。

「影伊、最近変だな」
「変…ま、そうだろうなあ」
「優から聞いたんだが…水織(みおり)…」

ぶっ…!

「汚ねえなぁ、吹くなよ!」
優…あんの女、どこまで吹聴してるんだ!
「その水織ちゃんに惚れたんだって? お前が」
「お前がってとこを強調すんなよ」
「選り取り見取りなの、遊びで手ぇつけてく、プレイボーイくんは、本気になっちゃだめでしょう?」
達夜はにんまりと笑った。

「水織ちゃんねえ、お前を惚れさせたって言うから、どんな子かと思ったら…。
たいした事ないと思うけどねえ。
ま、多少は可愛らしいと思うが…。」
そして携帯を開いてにやり。

「何見てんだよ」
「同じ高校に下っ端がいるんだよ。シャメ撮ってもらった」

普通に妹に撮ってもらえばいいだろうが!
わざわざ、オレの知らないプライベートを狙うところが達夜らしく意地悪だ。