「俺です」

「…お前が、水織を好きだというのは知ってるが…」
何を言い出すんだ、この男は…。
呆れてしまった…。

「違います。俺が早坂を好きなんじゃなくて、早坂が俺を好きなんです。誤解しないでください」

い、意味わかんね…。
大丈夫かこいつは。

いきなり優沙が笑い出した。

「あははは、なあんだ。つまりみーおちゃんが好きってことかー。
そんでいきなり自信過剰で勘違い? お笑いのコントみたいー。笑っちゃえー」

ゆ、優…。相変わらず爆裂なヤツ…。

当の郁は、そのままむっとした表情でオレを見ていた。

「今でも結構な距離があるのに、そんな考えしてたら、影伊に勝てないぜ。少年」

くすっと達夜が笑った。
だだをこねてる子供を、諭すような口調。
気持ちはわかるが、失礼な兄妹だぜ…。

「いいよ。このボーヤに、水織を惑わせるなって言われるだけは、進歩してるってことだからな」
ったく、驚かせやがって。
「お前はどうだか知らないが、オレはあいつを誰にも譲るつもりなはない。
覚悟して狙えよ」

言ったオレに一瞥くれて、郁はそのまま無言で、事務所を出て行った。

「難儀なヤツだな」
達夜が肩をすくめた。
「ああいうのが、ストーカーになるのよ」
「…あいつ、あの考えだと、何するかわかんねえな…。
影伊、気をつけてやれよ」
「ああ」

とはいえ、学校に言っている間は、いくらオレでも何にもできない……わけじゃねえ!!

松岡影伊をなめるな!

聞けばやつらは、クラスこそ違うものの、部活は同じ演劇部。

その時間がもっとも危ないと見た!

よって行こうじゃないかっ!
水織の高校へっ!!

こういう時、社員じゃないって楽でいいなー。