キキキイイ!

急ブレーキ。

げっ…引いたかっ。
すばやく外に出ると…。

制服の…女の子がいた…。
中学生…ぐらいの、その…可愛らしいというか…。

オレは、寺の息子だからだろうか。
人よりカンが優れてると自負している。

人の…中身を見れると思っている。

どんなに着飾っても、飾らなくても。
本質を見れる。そうやって今まで他人を見てきた。

…彼女は、白かったんだ。

見たことがないような、汚れてない心。
ふわふわの手触りの…羽のような…。
オレにとっては…天使だった。

「あ、あの…」

少女が転んだまま、オレを見上げる。
オレは何も言えなかった。だた固まったまま、彼女を見ていた。

こんなことってあるか?
このオレが、何もできないまま、転んでる女に手も差し伸べられないなんて!

「スカートが…あの…」

はっとして見ると、彼女のスカートは車のタイヤの下になっていた。

「あ、ご、ごめん」

そう言うのがやっと。
オレは車をバックさせた。

な、なんだこの気持ちは。
ひとめぼれなんて信じないぞっ。
運命なんてあるわけがない!

なのに…なのに!
どうしてこんなにハイペースなんだよ、オレの心臓ちゃんはっ!

りんごーんりんごーん

鐘の鳴る音が聴こえる。
おめでとう、恋の始まりだ。

じょーだん! やめてくれよ!
あんな子供に! …子供に…。

……そうだよっ!
一目でハマったよ。

…あの天使に…。