【10月の贖罪】


オレは大酒飲みだ。
元ホストで、酒を飲むことが仕事なようなもんだったし。
毎日浴びるほど飲んでたわけで、そりゃまあ強くもなる。

そんなオレと負けず劣らず飲む達夜。


その日、達夜に飲みに誘われて、家に行った。

ひとしきり酔いが回った頃には、その辺に空き瓶がゴロゴロしていた。

しばらく目を閉じて黙っていたので、寝たのかとってたのだが。
達夜が、不意にまじめなトーンで、切り出した。

「…影伊…オレ」
「ん?」
「お前と、張り合うつもりはないんだ…」

水織の事だというのは、すぐに判った。

何ヶ月か前に達夜が「手におえない」と言ってから。
その視線はいつも水織を見ていた。
その腕はいつも水織を守ろうとしていた。

あがらっても、じりじりと魅かれていくのは、傍目からでも判っていた。
そしてその感情から、辛そうに目を背け続けているのにも。

「オレも…お前とはやり合いたくないな」

達夜と水織。
どっちかしか選べないのだとしたら、オレは迷うことなく水織を選ぶ。

でもそれは、達夜を失ってもいい、という事じゃない。