「オレになにか用か?」
水織が風呂に行き、2人になった途端、真成の目つきが変わった。
見通そうとする目。

「…水織を好きなのね?」

フっと軽く笑って、真成は言った。

同じ守ろうとして行動している分、気が付くのだろう。
なかなか見る目があるじゃないか。
まあオレも、隠してるつもりはないが。

「ああ…」

「その気持ちの重さは、どの程度なのかしらね」

気持ちの重さ…。
 
水織に会ってから。あいつに魅かれる度に、想いは大きく重くなっていく。
どうしてこんな事を聞くのかわからない。

でも、オレも吐き出したい時もある。
言えない…伝えることが出来ない想いを。
 
「どうして…こんなに好きなのか…。あいつのどこにこんなに魅かれてるのか…それがわかってるなら、もっと上手く振舞えるのかも知れない…。
あいつに会ってから、時間が経つのが早くて…遅くて、どうにかなりそうだ。
手も出せない、けど出したい。想いを告げたい告げられない…。
全部本当の気持ちで、何をしたいのが自分でも理解できないんだ」

息絶えることもできない、永遠さまよい続けるだけの迷路。そのうち…狂うかもしれない。
目の前に、無数に立ち並ぶ扉を開ける鍵。 その言葉は…。

「あいつが…欲しいんだ…」
     
…その望みだけ…。