走る寄ると、立ち上がろうとした水織が、そのまま支えなく、前のめりに倒れこむ所だった。

「おいっ」
腕を伸ばして、抱えて胸に引き寄せる。
後ろ姿なの顔色は伺えないが、ぐったりとしている。

息が少し、荒いかも。
そのまま抱きかかえた。

抱いて見てみると、水織は真っ青な顔で、頬だけ赤く紅潮していた。
暑さにやられたのだろうか。

「おねえちゃんだいじょうぶ?」
「どうしたの?」
「おにいちゃん、だれ?」
今まで一緒に遊んでいた子供達が、わらわらと足元に集まってきた。

「お姉ちゃんは、疲れたみたいだから休まなきゃいけないんだ。だから今日はこれで終わりな」
残念そうな子供達だったか、動かない水織を見て、納得したようだった。
「それと…お兄ちゃんは…お姉ちゃんの」
水織の…。
「恋人だ」
…予定。


急いで車に戻らないと…。
「お兄ちゃんっ」
おっと…杏奈がいたんだった。

衝撃的な事件も、水織の事で忘れてた。

「車に戻るけど、お前どうする? 送っていくか?」
「…知らないっ! 馬鹿っ」
むーっとして、杏奈が少し声を荒げた。
さすがに友達の前じゃ、叫ぶことはできなかったようで。

「騙されてるのよっ」
杏奈は、履き捨てるように言って、水織とオレを睨んだ。
「…杏奈…」

…キス。
杏奈にしたら、キスという手段を出しても、この扱いなわけで…。
それはまあ、ムカつくのもわからないでもないんだが。

「前にも言ったろ? …水織が大事だって」
杏奈の後ろで、杏奈の友達がオレをみて、きゃあきゃあ言っているのが見える。
女を抱いてるわけだし…そりゃまあ目立つわな。
「自分を変えるつもりはないよ」

固まる杏奈を後目に、オレは急いで車に戻った。

妹。
どうしたものか…。
正直、どうしていいのか、まったくわからん…。
お手上げ状態のオレだが、漠然と、このままじゃいけないとは、感じていた…。