「な…」
なんという屈辱…。
「初めてだよ」
そう囁くと、杏奈はさっとオレから離れた。

正直、女からキスをされたのは初めてじゃない。
けど…まさか妹から…この状況で妹からとは…。
後悔というかなんというか。
この感情はなんと言うのだろうかっ。

そのオレをにっこりと笑って見ている杏奈。

バランスと崩した兄を、妹が近寄って支えた、くらいにしか見えなかっただろうが。
それにしても、友達が後ろにいるのに…。
まさか、そんな事をされるとは思わなかったぜ…甘かったか。

ざわっ…

自己嫌悪するオレの後ろで、軽いざわめきが起こった。
見ると、水織が地面に膝を付いている。

どうしたんだっ…。
一気に水織に向かって駆け出した。

「お、お兄ちゃん!」
後ろで杏奈の声がしたけど、そんなのはどうでもいい!