【7月の唇】


その日はやたらと暑かった。
昨日の雨で、蒸した不快感。

公園の映像を撮ってきて欲しいと言われ、オレと水織は、デジタルビデオを持って、炎天下。
週末で、人に溢れた公園に向かった。

子供とその親、近くの学校の学生。
割と広い公園の中は、笑い声に溢れていた。

空が蒼くて、高い。
が暑いっ!


「ええと…どんなだっけか」
 
オレはメモを取り出す。

・子供が遊んでる風景。
・誰も乗っていないブランコが揺れている風景。

何に使うんだ、一体。

「えと…じゃちょっと子供達に頼んでこよう」
水織が、子供達と、その親に話しに行った。
事情を話すと、快く、まずはブランコを空けてくれた。

揺らして、録画。

「おっけ。あとは遊んでるとこを撮らせてもらうだけだ」
水織は、ブランコを空けてくれたお礼に、乗りはじめた子供の背中を押していた。

子供達は、一緒に遊んでくれる大人が現れたと、おおはしゃぎ。
水織の手を引き、今度は滑り台。

「あははは、危ない危ないっ」

楽しそうに、自分も子供かってくらい、水織は遊んでいた。
仕事で来ているとは、ころりと忘れているのであろう。

オレは少し離れて、その風景を録画していた。
もちろん、仕事は仕事なので、なるべく水織は映らないように心がけた。

本当は、彼女だけをずっと映していたかったんだけが。

一通り、撮影が終わる。

ビデオカメラをしまって、あとはどこで切り上げるか、となった時。