愛しくて壊しそう

「…ライバルかなぁー?」
優がおもしろそうに呟いた。
「ライバルになるかよ、あんなのが」
肩をすくめる優。
「ま、ね。あたしあの子嫌ーい」
「そいつは可哀想なこって」

あんなガキに、取られるわけがないっ。
まあ、まだオレの女じゃないけどさ。
背も小さいし、細身で頼りないし、ルックスだってオレのほうがイケてる! 

と、階段から郁の姿が。
「あの」
水織は上にいるのだろうか。
オレに声を掛ける。
「なに?」
「オレ、負けませんから」
「は?」
小さく頭を下げて、郁はまた階段を上っていった。

はいいいい?
な、なななにが「負けません」だっ。
お前なんて、何から何まで全部においてオレに負けとるわっ!
黙っていればいい気になりやがって…。

「魔性の女…」
優がしみじみとこぼした…。