愛しくて壊しそう

次の日。割と晴れた中、近くの湖までドライブにいく。
水織の目には、オレは「面倒見のいい先輩」として映っているようだ。

一緒にいるだけで、こんなに幸せな気持ちになれるのに、どうしてオレはそれ以上を求めてしまうんだろう。
彼女の全部が欲しくて。
手に入れたくてどうしようもない。

こぼれる笑顔も…首を傾げる癖も。
オレを覗き込む視線も、長い髪も。
全部欲しい…欲しい。


ドライブして、食事をして…。
帰りになると、水織は疲れてしまったのだろう。
助手席で寝息を立てていた。

なんでこう警戒心がないんだろう…こいつは…。
男と一緒で、しかも車の中。
何かされるかもとか思わないか? 普通。
オレが信用されているというのもあるのだろうが…。

鈍感というか、無垢というか。
…もしかして、思っている以上に、純粋培養なのだろうか。
どうやって育ったんだろう…今まで無事で良かったよ…。

時間は16時。
帰路についている。健全なデートだ。

小さく寝息すら立てて寝入っているのは、安心しているからだと思っていいんだろうか。

この2ヶ月あまり、何度も何度もついた溜め息。

ああ、そういえば「帰る前に事務所に送ってほしい」と言われてた。
忘れ物でもしたんだろう。
車を事務所に向ける。