「…………ねぇ」 彼女が口を開く。 ―――終わった。 「このまま、どこか逃げてしまおうか。 誰もあたしたちを責めない、 あたしたちを知りもしないところへ」 「…………え?」 「そこのフェリー乗り場から、 次に来る船に乗ろうよ。 行き先はその船の行くところ」 彼女は怒りもせず呆れてもおらず、 にこりともせず… 表情ひとつ変えず言い放った。