その人の前で、私は佐藤乃々香という名前の妹になる。


近くて遠い、女になる。


そして、多分本当じゃない名前を呼ばなきゃならない。


どうして心は操れないのか。


なんで恋はいつも突然やってくるのか。


なんで、スケジュールをたててから、きてくれないのかな。


ごちゃごちゃになった思考回路をほどくことすら面倒で、頭を空っぽにさせる。


そんな中でもどうしてもひとつだけ。


あの甘い香りだけは、嗅覚に残ってしまったのか、


消えてはくれない。