不機嫌なアルバトロス

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「じゃ、花音。ちゃんと真っ直ぐ家に帰るのよ?」


4WD車の助手席に乗り込むと、憲子がウィンドウを開けて言った。


憲子は暫く私に付き合ってくれたけど、結局なんだか悪くなって、裕ちゃんとの予定が間に合うなら裕ちゃんの所に行ってと私が言って、迎えにきてもらうことになったのだ。


「うん。わかった。ありがとう」


ほろ酔い気分なので、すこぶる寒くは感じないが、吐く息は白い。


運転席の裕ちゃんにも軽く会釈して、発車するのを見送った。



「いいなぁ…」



一人っきりになってから、コートのポケットに手を突っ込み、知らぬうちに零れる言葉。



男に依存していると言われればそれまでだ。


だけど、一人で生きていける程、私は強くない。


一人は寂しい。


憲子の様に、上手に生きれたらいいのに。


そしたら、私にも今頃あんな彼氏、居たかな。


考えても仕方のないことを思った。