不機嫌なアルバトロス

だからきっと二度と逢わない。

逢えない。



「忘れるしかないでしょ。人間失敗はつき物よ」



ぽんぽんと肩を叩いて、憲子が慰め役になる。


酔うと、私が泣き上戸になることを知っているのだ。



「ふぇーん」



おぉ、よしよし、と赤ちゃんをあやすみたいに憲子が私の頭を撫でるフリをする。



嘘泣きして小さく声を立てながら、私はふざけた。



甘い香りが嗅覚に残っている気がするようで。


原因不明の苛々が治まらなくて、お酒を美味しく飲めなくて。


そのことに憲子に気づかれないようにと。


ただひたすら、お酒を飲んで、忘れて、なかったことになったらいいのに、と思いながら。