「…でも、俺、言ったよね?」
ふぅ、と溜め息を吐き、呆れたような表情を見せる中堀さん。
その声は、少し揺らぎがある。
どうしようか、決めかねている、と言うような。
「ここに来てる時点で、もうわかってると思うけど、俺は―」
「何度もっ!!」
中堀さんが言わんとしていることは、なんとなく分かっている。
けれど、敢えてそれに被せるように、私は声を発した。
必然的に、中堀さんは口を噤む。
「何度も…諦めようって思ったんです…、、、私だって…ちゃんと…」
握った拳に、更にぎゅっと力を籠める。
「中堀さんも、、好きになっちゃ駄目だって言ってたし…、貴方は、、そういう、、仕事をしていたし…」
最初は。
絵に描いたような、王子様みたいな人だから、自分には不釣り合いだと思っていた。
なのに、期待を持って、のこのこと誘いに応じて付いて行った。
そんな自分の考えは浅はかだったのだと、直ぐに思い知った。


