不機嫌なアルバトロス

「それから、俺にどうして欲しいの?キスして寝れば満足?」



どこを見ているのか、わからない程、暗く沈んだ目で中堀さんは聞く。



私の返事など待たずに。


伏せられた瞼。


近づいてくる、唇。



私の利き腕は、掴まれたまま。




こんな展開は、私の望むものじゃ、ない。



物理的な距離は縮まっても、遠退くばかりの、目の前の人。






「うっ」




となれば―




「っぬぼれんじゃないっ!!」





私は思い切り、中堀さんの向こう脛辺りを蹴り飛ばす。





「ってぇ…」



だって。



空いてるのは足しかなかったんだもん。



仕方ないよね。




だって、ほんと、なんか、腹立つ、この男。



私は、さっきより少し離れた場所で、痛みに顔をしかめている中堀さんを真正面から睨みつけた。




ムカつくのよ、そのポーカーフェイスが。