不機嫌なアルバトロス


「ちょっと優しくされたら誰でも良いわけ?」




「っ!そんな…」




へらっと笑う、中堀さん。



彼は色々な笑い方をするけれど、今度のは今まで見たことがない。



人を心底馬鹿にして、軽蔑するような、そんな笑い方。




「で、伝えたいことって何?」




煙草の吸殻を地面に投げ捨てて、足で乱暴に踏みつけると、中堀さんはゆっくりと私に近づいてくる。




「まさか、俺のことが好きだ、とかばかげたこと言わないよね?」




ゴクリ、生唾を飲む音が、自分から聴こえる。


後ろに、退くべきか、一瞬迷ったけれど、私は足に力を籠めて、踏み留まった。






「も、もし、そ、そうだとしたら、、、何がいけないんですかっ」




「別に…悪かないよ?」



噛み付くような言い方をする私に、中堀さんは冷たい一瞥を向け―



「いたっ」



私の腕を強引に引っ張り、自分に引き寄せた。





「それから?」




中堀さんは私に顔をぐっと近づけ、息のかかる距離で問う。





「え?」




揺さぶられっぱなしの心臓に、ワケがわからず私は瞬く。



あの距離はいとも簡単に縮められたと言うのに、この失望感は何なんだろう。