不機嫌なアルバトロス


けれど、中堀さんはこっちを見ていない。



ジャングルジムに背中を預けて、どこか遠くを見ている。



独り言だったのか?という考えが一瞬過ぎる位。



今の中堀さんが言ったの?と聞きたくなる程、会話らしくない。





「…中堀さんに、会いに来ました…」





中堀さんの居る場所は、ジャングルジムのちょうど真ん中辺り。



私は角に立っている。



お互い遠い場所にはいない。


どちらかと言えば、近くに居るのに。



こんなに近くに居るのに。



何故だか、ものすごく距離がある。







それは、心が離れてしまったからなのか。


それとも、契約外だからなのか。






「…それで?」





とにかく、とても遠い。





本当は。



中堀さんの姿を見つけた途端、駆け寄りたかったのだけれど。



彼の纏う空気が、私は今の場所で限界だと言う。





「そ、それで…あの、、私、、後悔してて…やっぱり言えば、、良かったって…」





自分がここに居ること自体、責められているような気がして居たたまれない。





「だって…私、、中堀さんのことがっ…」




そこまで言いかけた所で、初めて中堀さんが、私を見上げた。




「あんたさぁ、なんか勘違いしてない?」




ゆらり、彼は立ち上がる。



そうすると、今度は見下ろされることになるわけで。



私は思わずびくっと肩を震わせた。




恐い。


怖い。



何が?




中堀さんが?


それとも、振られることが?



どちらにせよ、私には失うものはない筈なのに。