不機嫌なアルバトロス


















大きな門は、施錠されていて入ることができないが、その脇に小さな扉が付いていた。


傍に寄って見ると、鉄の棒がでっぱりに引っ掛けてあるだけで、容易に開けることができた。


キィ、と少し錆びれた音が、静寂の中響く。


できるだけそっと中に入ると、私はもう一度、施設をじっくりと見つめた。




グランドが手前に広がっており、その奥に大きな白っぽい平屋がある。



空は大分白けてきてしまって、意外とはっきりと辺りを見渡すことができた。




どこにいるんだろうと、恐る恐る歩を進める。




遊具はほとんどないけれど。




あ。





その隅にぽつん、と。


それこそ、影に隠れるようにひっそりと。



青い、ジャングルジムがあった。




その足元に。



座り込む、ひとつの影が、まるで添うように落ちていた。




音を立てないように、と気をつけて歩いてみても、これだけ静かだと、実現は不可能に近い。





けれど、私が近づいても、彼は―




中堀さんは、膝を無造作に立てたまま、煙草を吸っていて。




こちらを振り向くこともしなかった。