不機嫌なアルバトロス

また、無言の旅が続く。




中堀さんへの想いは強く、逢えるという希望が少しでもあるうちは、眠気なんて襲ってきそうになかった。




単調に思える道路も、緩やかなカーブも、闘いには似つかわしくなんかないのに。




勇気を奮い起こさないと逃げ出してしまいそうな自分が居る。



やがて。






「着いたよ」






バイクが完全に止まり、タカが私に声を掛けた。





「ここが…」




私はバイクから降りると、門であろうその場所に掛かる表札を見つめる。







中堀さんの、育った施設という所は。



騒がしい街中からは少し遠退いた場所にあった。



都会の流れを断ち切るかのように、建物に沿って植えられている木々の背は高い。





「もし、帰ることになるとしたら、ここで待ってるから。そうだな…20分、待って…来なかったら、帰るよ。」




「…うん……ありがとう…」




タカの言葉に頷きながら、手が震えていることに、今更気づいた。


風に漂う、私達、どちらからのものでもない、微かな煙草の香りが、緊張に拍車をかけた。


でも、それと同時に。


伝えたい気持ちが、溢れ出す。



ダムが決壊したように。




「行ってくるね」