不機嫌なアルバトロス

それからは、私とタカは言葉を交わす事無く、風を感じながら走り続けた。



道路は昼間の喧騒が嘘のように、誰も居なかった。





やがて、景色は段々と駅の近くになって行き―





「そろそろ、歩道橋だけど、、、どう?上に人影、見える?」





タカが訊ねた。




「えっと…」




目なら、さっきからずっと凝らしている。



けれど―




「いません…」





期待しながら見上げたその場所に、人影など皆無だった。




「アテが外れたな。こっちじゃないか。―じゃ、施設に行ってみるか。」




すぐさまタカは何も通らない道路を、少し乱暴にUターンする。


バイクの向きに身を任せるって、結構難しいんだな、と実感した。



青白く染まり出した街を見ていると、焦りが生じる。




―どうか。



次の目的地に向かうまでに、何度も願った。




どうか、もう一度。





あの人に逢わせて下さい、と。