少しの間、沈黙が漂う。


暖房がかけられているというのに、私の手は冷たい。


景色を見ることも、中堀さんの横顔を見ることも出来ずに、ただ握った拳を見つめていた。



どうすればいいのか、もう、よくわからなかった。



中堀さんはこの手の話になると大体口を閉ざすかはぐらかすような気がする。


それくらい、女には興味がないということなのか。





「…あんたはさ…」




呟くように落とされた言葉に、顔をあげることもできないまま、耳だけに神経を集中させた。




「あーいうのに、意味をつけないと、駄目な女なの?」




「…え?」




中堀さんが何を言いたいのか理解できない。




「俺にとっては、キスは何の意味もない。あの時も―」




言いながら、ギアを動かした中堀さん。




「崇にされたことがムカついたから、しただけ。他意はないよ。」




車が、停止、した。




私の思考も、止まる。


他意は、ない。


ってことは…



何の、意味も、ない。



「は…」



乾いた笑いが、自然と零れる。


頭のどこかではわかってたような気もする。


他に、とても良い答えが思いついてたわけでもない。



中堀さんが、愛を囁いてくれるだなんてこれっぽっちも思ってない。



けど。



私にとって。


キスはやっぱり。


意味のある行為で。



だから。



「だったら…」



万が一でも、その時だけでも。




「期待、、させるようなこと…しないで、、ください…」





その一瞬だけでも。


私のことを、見てくれていたんじゃないかって。



あぁ、やっぱり。



自分は期待してたのか。