微妙な距離。


歩幅は私に完全に合わせてくれているけれど、ぴったりとは寄り添わない。



あーあ。


もう着いちゃった。


もう少し、こういう風に歩いていたかった私は、前方に見えてきたものを見て、がっかりした。



遠くからでも、もうわかる。


中堀さんの車はしっかりと覚えてしまった。







「さ。乗って。」





「え…」



てっきりいつも通り後部座席に座るものだとばかり思っていた私は状況が飲み込めず立ち尽くす。




「俺、彼女居なくなったし」



さらりと言ってのけた中堀さんは、助手席のドアを開けて私に乗るようにと促した。




ここにきて、ご褒美!?



絶対に中堀さんのただの気紛れだろうけれど、私は一気に有頂天になる。



「お、お邪魔します…」



口がにやけないように必死に頬に力を入れつつ、中堀さんの見守る中、助手席に座った。



少し小ばかにしたような笑いが聴こえたけど。



実はその笑い方すら、ちょっと好きだったりする。



そんな私は、もう、末期だ。