少しほっとしたような表情の中堀さんに、胸が痛む。



―面倒な女だと思われたくない。



もう十分に思われているはずなのに、私の臆病はこんな所で顔を出してきた。



半歩先を行く中堀さんの後をついて、どうにかあの左手を掴めないものか、と思案する。



それだけの願望も自分では叶えることが出来ない。



だって、私はなんでもないから。





駐車場に行くのに空港の外に出た瞬間、途端に冷たい北風が髪を揺らした。





「さむっ」




顔に貼りついた髪の毛を払いのけながら思わず呟くと、中堀さんはふっと笑う。





「もう風邪、ひかないようにね?治すの大変だったんだから。」




「なっ!あれは中堀さんがっ…キ…」




反論しかけて、言葉に詰まった。


すれ違う人が多かったからだ。





「んー?なーに?」




絶対分かっているのに、わざとらしく知らないフリをしている中堀さん。



ムカつく。