「…っとに、あんたはいつも不機嫌なんだな。」
呆れたような声で言われて、不本意ながら振り返ってしまった。
「そ、そんなことありません!」
「いや、最初からそーだよ」
何を思い出しているのか、難しい顔をしながら中堀さんは宙を仰ぐ。
―た、確かに。
私はいつも中堀さんの前でしおらしい態度なんてとっていない気がする。
自分で思い返してみても、散々な記憶しかない。
「何せ、殴られたしなー」
いまだ顔をしかめつつ、頬に手をあてて見せる中堀さんを見ないフリする。
図星過ぎて何も言えない。
私は黙ってぬるくなったミルクティーを飲んだ。
小さくなって、缶と向き合うが。
自分で作った筈の沈黙が、痛い。
中堀さんのことをチラッと見ると、悪戯っぽく笑って私を見ていた。
「!」
益々私は縮こまる。
「ま、飽きなかったよ。」
言いながら、中堀さんは立ち上がって、私と向かい合わせになり、手を差し出す。
「もう…、空でしょ?」
嘘ついたのがバレた子供のように、がっかりした。
「…はい」
なんでわかったんだろう。
甘いミルクティーは、実はとっくに終わってしまっていた。
でも、少しだけ、時間に猶予があった気がするのは、中堀さんの優しさからだろうか。
渋々、私は空になった缶を中堀さんに渡す。
何も言わずに、中堀さんはそれを受け取ると、すぐ傍のダストボックスに入れた。
そして、戻ってくるなり、言った。
「さ、行こうか。」


