志織さんのタイムリミットは、ここで終わった。
私の時間は、あとどれくらい?
どのくらい残ってる?
中堀さんは、いつもこんな風にして何度も別れを経験してきたのかな。
そうやって、どの人とも手を繋ぐ事無く今まできたのかな。
黒髪の男の人。
誰もが好きになるけど、誰も好きにならない架空の人。
ぼんやりしていると、目を真っ赤にして中堀さんから離れた志織さんが視界の脇に入ってしまい、慌てて自分の目を逸らした。
次に泣くのは、きっと自分だ。
でもどこかで、その瞬間を確信しきれて居ない自分に呆れる。
もしかしたら、はまだ自分の中にある。
それくらい、彼を諦められないでいた。
だけど、自分の想いを伝えるべきかどうかは、まだ決めかねていた。
でも他にどうやったら、中堀さんの心を繋ぎとめておけるだろう。
さよならしないでいられるだろう。
丁寧に拭きあげられた床をじっと見つめ、そう遠くはないタイムリミットに実感が涌き始め、緊張が募った。


