家に着くと、お風呂に入り支度を整えまた外に出た。
真っ暗な道を息を切らしながら、走る。
土曜日の駅のホームは人でごった返していたが、空港方面は比較的少ない。
ちょうど来た電車に飛び乗ると、ドアの脇の手すりにもたれかかりながら、外を眺めた。
席に座ることはできなくとも、満員電車よりもスペースが開いていた。
腕時計を確認すると、時刻は17時40分。
―良かった、間に合う。
張り詰めていた緊張が溶け、やっと私はひと息吐く。
車内の温風が、走ったせいで紅潮している頬をくすぐる。
『俺の忠告は正しいよ?』
頭の中で、何度も燈真とのやりとりが繰り返されている。
どういう意味だったのか、わからないまま、中堀さんと会う。
好きと、伝えることは自分の中で固まっている意志だった。
なのに、今、その決意が揺れている。
それは他でもない、燈真のせいで。
今一度、正しいのかと考える。
だって。
私は、余りにも。
中堀さんのことを知らなさ過ぎる。


