「零に会うのは今日で最後、でしょ?」
何でもお見通しなのか、と思うほどに。
両手を上げて降参したくなるほどに。
燈真は全てを見透かしている。
「…どうして…」
なんで、知ってるんだろう。
益々眉間に皺が寄る私を、燈真は可笑しそうに見ている。
「そんなに怖い顔しないでよ。【最後】だから、ちゃんと教えてあげようって言ってんの。」
一見、親切そうに見えるけれど、この男の親切は、恐らくかなり高くつく気がする。
「いや…結構です…」
断ると、益々楽しそうに、燈真が笑い声を立てる。
「花音ちゃんはほんと面白いねぇ。…まぁ、そう言わずに。きっと、俺と会うのも、最後、だからね?」
燈真が人差し指で煙草の先端を叩いて、灰が床に散った。
何を言っても、無駄な気がして、私は黙る。
更に燈真の言葉に、今がタイムリミットの最終日であることを知り、少しの焦りが募り始めている。
一体今は、【今日】の何時なのか。
早くここから出なければ。


