いつの間にか、すぐ傍に来ていた葉月、と呼ばれた女の子が私たちを見ていた。



意志が強そうな黒目がちの彼女は、無表情だった。




「あー、葉月。俺は、いつものでいい。カノンちゃんは、ノンアルコールで。」




タカが肩を落としたまま葉月に言うと、彼女の眉がぴくりと動く。



「…カノン…?」



小さく呟かれた自分の名前に、心臓が跳ねた。




「…あなたが…?」




険しい目つきでこちらを睨む彼女からは、決して友好的なものは感じられない。


むしろ正反対の。


悪意、と呼ぶ方が正しいような空気が漂う。


でも、私にはそんな風に思われる覚えがない。


何故なら、初対面だからだ。




「あれー?葉月、知り合い?」



タカが暢気な声で訊ねるが。




「…知らない」



葉月は冷ややかな声で否定すると、そのまま無言でドリンクを作り始めた。



「葉月が大人しいとか、珍しいこともあるもんだ。槍でも降るのかな」



それを冷やかすように、タカが笑った。



「…あのー」



そんな中、私は首を傾げてみせる。



「ああ、葉月?」



気付いたタカがそうだったね、と頷く。



「カノンちゃんは会ったことないよね。葉月は燈真の妹なんだ。」