「あ、いや、その、こ、困りますっ」
私は慌てて腕を外そうとばたばた暴れだす。
「直ぐだから!ちょっと我慢してて!」
なのに何をどう勘違いしたのか、おにーさんはお門違いな気遣いをしている。
いや、ちょっと、、まずいよ。
踵でなんとかブレーキをかけるも、引き摺られていく。
だって、そっちには…
「崇ー!!!!」
あぁ…最悪…
穴があったら隠れたい。
私は顔を極力俯かせて、どうかタカに見られませんようにと願う。
が。
「え…もしかして、カノン、、ちゃん?」
現実は無慈悲だ。
スツールの脚の部分が目に映る。
そこに見覚えのある、靴がある。
私は、観念したように顔を上げた。
タカの驚きと喜びが入り混じったような視線とぶつかる。
「その通り。お前がお待ちかねのカノンちゃん、だぜー。じゃ、俺は戻るから。」
無責任にも入り口のいつものおにーさんはすごい親切をしたかのように得意げに去っていく。
後に残された、二名。
私は押し黙ったまま、また下を向いた。
「…とりあえず、座って?」
そんな私を困ったように笑うと、タカは自分の隣を勧めた。


