「ねぇ!あなたさっきから何なの?入るの?入らないの?」
入ろうとしてやっぱりやめた、と戻って、また入ろうとして迷うを繰り返していると、後ろから高い声が苛々を含んで飛んできた。
「え…」
思わず振り返って、息を呑む。
何故なら。
「そこいると、邪魔だから!」
そう言うと私を強く押しのけ中に入っていったその女の子が。
他でもない。
日曜に中堀さんに抱きついていた、黒髪の女の子だったからだ。
ズキン、と胸が痛む。
結局、あの子が誰だったのかは、わからず終いだった。
あ、あの子も、クラブに入っていったってことは…中堀さんに用事があるのかな…
っていうか、そもそもあの子、中堀さんの何なんだろう。。
今度は悶々とし出す私。
駄目だ。
これでは埒が明かない。
―ええい!
思い切って、難しく考えることを止めて私は重たい扉を押した。
聴こえてくる重低音。
人々のざわめきと熱気。
そして―
「…あれ?おねーさん、、、初めてじゃないね?」
入り口のおにーさんは、私の知っているおにーさんだ。
「あ、こんばんは…」
とりあえず挨拶をすると、私を見つめていたおにーさんが、あぁっと言う顔をした。
「あんた、もしかして…こないだの…!」
そしてそう言うなり、私の腕をがしっと掴む。
「え?ちょっ…」
私は驚きの余り、抵抗する余裕もなく、ぐいぐい中へと引っ張られていく。
―ど、どこへ…
人ごみを掻き分け、連れて行かれる場所は。
どうもカウンターに向かっているようにしか、思えない。


