不機嫌なアルバトロス

俺が笑うと、櫻田花音は思いっきり信じられないという顔をする。



ほんと、中身が隠せねーのな。



『え、冗談ですよね?』




冗談言う程暇じゃねーよ。と内心ツッこむ。




『ま、信じなくてもいいけど、俺半分は日本人じゃないんだよ。』




でも。




ほんと、なんで、こんなこと、こいつに話してるんだろ。




『だけど、その半分が、どこの血かはわからない』




話す必要なんか、これっぽっちもないんだけど。



笑う俺とは反対に、櫻田花音の表情は曇る。



と、同時に。



ぐ、ぐぐぐぐ―――



気の抜ける音が響いた。



『はっ!』




見ると、櫻田花音が顔を真っ赤にして自分の腹を押さえている。




『ぶっ…くくっ…』




あー、もう。


なんか、どーでもよくなっちゃうな。


いろんなことが。


笑って済ませそうだ。




俺は、ポタージュを温めにキッチンへ立つ。




―でも。




沸々している鍋の中を見ながらこっそり安堵する。



あんたの腹の虫に感謝だな。



ちょっと…危なかった。



これ以上、自分は何を言おうとしたんだろう。



言った所で何になるっていうんだろう。




相手はどうせ、あと数日でおさらばする人間なのに。