どうも解せない。
なんで、そいつは良くて俺は殴られるんだよ?
俺は無性にイラついて、櫻田花音と合った目をすぐに逸らした。
機材を操り、会場を魅了することに、意識を集中しなくちゃならないのに。
―好きな奴とじゃなきゃ、キスできないとか、俺に言った癖に。
別にどうだっていいんだけど。
なんか。
気に食わない。
ふと気付くと、燈真は違う客と談笑していて、崇はぼんやりしながら酒を飲んでいる。
―『今日来てた子、零に用事があったみたいよ?』
あの夜のここでの出来事が思い出された。
演奏を終えても、ムカムカは治まらないまま、カウンターに行くと、崇がにやっと笑いながら俺に言ったのを覚えている。
『なぁ…俺、あの子、気に入っちゃった。』
舌なめずりをしながら―
狼は、罠を張り巡らす。
『…ちょっと待てよ、あいつには俺まだ用事があるんだけど…』
自分でもよくわらかないが、俺は咄嗟にそう言った。


