ま、どっちにしろ、こっちが片付いてからだ。




「乃々香の手術が成功すれば、直ぐに会えるさ。それに志織だって向こうの仕事が忙しくて暫くは俺のこと思い出す暇もないかもよ?」


ワインリストを見直しながら茶化してみても、志織の機嫌は直らない。



「そんなことないわ。」



やけにきっぱりと言い切ると、志織は剥れたままグラスに口をつけた。



こんなことも、珍しい。



短い付き合いだから、よくは知らないが、志織が俺の前でここまで感情を露わにすることは余りなかった気がする。


女の勘、て奴か?


飛行機に乗ったら最後、二度と会えないことを、なんとなく感じ取ってるのだろうか。




結局会計を済ませて車に乗り込む時まで、志織の機嫌が直ることはなく。


―仕方ない。


薄暗い駐車場。



「んん…」



助手席に乗り込んで、唇をきゅっと結んでいる志織に、運転席から半ば強引にキスをした。


最初は少しの抵抗を見せるも。


直ぐに志織の身体から力が抜けていくのがわかる。