不機嫌なアルバトロス

俺を招いての演奏=クラブパーティーの夜。


DJとして、俺は結構知名度が高く、普段の客に加え、聞きつけたファン達も集まってきて、会場は中々の熱気に包まれていた。


俺はアナログターンテーブルを好んで使う。


レコードがかさばるんだけど、自分の思い通りに動かせることや、音の良さ、深みが出ることを理由に、できることならこれがいい。


機材は既にセットされていて、他のDJが前座って呼んで良いもんかわからないけど、まぁ、やってくれてる。




零(ゼロ)の時間に、俺のパーティーは、始まる。



それは、誰が決めたことでもなく。


本当に、なんとなく、で。


一番盛り上がり始めるこの時間に、たまたま俺がふらっと演奏するようになっただけ。



それが、いつの間にか、広まって、このクラブでの零の時間は特別な意味を持つようになった。


その流れで、俺は零と呼ばれる。



―そろそろ、か。





俺は時間を確認すると、演奏中のDJの肩を叩き合図し、誰にも気付かれないよう入れ替わった。




クラブでは、前の曲と次に掛ける曲が違和感なく繋がるように、客が途中で踊ることを止めてしまわない様に、二つの曲をまるで同じ曲が続いているかのようにミックスすることも多い。



でも俺はカットインが断然好き。

特にブレーキを使ったカットインが。


瞬時に曲を変える、この瞬間がたまらない。



俺の、音だ。って。


言葉がなくても、全員に伝わる。