実際時間が、あまりなかった。


わざと志織と鉢合わせするために、橙真の店を使っていた。


勿論志織は橙真のことを知らないわけだけど。


以前に教えた隠れ家的なあの店を、志織は結構気に入っていて、特に金曜の昼は必ずと言っていい程利用しているらしい。


詳細な時間は店員に適当な嘘を吐いて声を掛けてあるから、わかっている。


志織が日本を発つのは、二週間後、だ。


できるなら鉢合せは今日中に済ませてしまいたい。



舞台を整えている俺の思惑通りに、ターゲットは今の所動いてくれている。



さぁ、あとはあんたが動いてくれさえすれば、全てはうまく行くんだ。



俺に惚れてくれれば、ね?




「おっと」



俯いて歩く女にぶつかるのは容易い。



「…すみません」



けど。


「あ、ちょっと。」


俺を見る事無く立ち去ろうとする女の腕を軽く掴んだ。



なんでこの女。。。




謝る時は人と目を合わせてって、習わなかったのか?


人の事、いえないけど。