それから、通る時間帯をはっきりさせて、角を曲がる際に不注意にも俯く癖があるのも確認。
今一番付けこみやすい時期だということも加味すると、ちょうど良いタイミングのように思えた。
志織とは、妹の事できちんと揉めておいたし、舞台は整っている。
―今日、だな。
冬が深まりつつある金曜日。
さて、どんな偶然を装って、彼女に近づくか。
ぼやけていたビジョンが急に輪郭を持ち始める。
―ぶつかるまでは、いい。
上手くそのバッグがひっくり返れば大成功、なんだけど。
その反応で、採用か不採用か考えよう。
まー。。。
なんとか、なるだろ。
駄目だったら、駄目で、そん時は次を探せばいい。
―来た。
寒そうにマフラーに顔を埋め、横断歩道を渡る女を見つけると、俺は何食わぬ顔をして、歩道橋の階段をゆっくりと下りる。
腕時計で時間を確認しながら、
―上手く、いってくれよ。
心の中で念じる。
そして、角を曲がったと同時に声を上げた。
「うわっ!」
案の定俯いている女が、目の前に居たという計算通り過ぎる出来事に笑えた。
その一瞬に、バッグの位置を確認し―
ドン!バサバサッ
無事、ターゲットに接触。


