クラブの屋上の手すりに背中を預けて空を仰いだ。



吐き出した煙草の煙が、高くなった月にかかる。



今夜は星がきれいに見えるのに、それを台無しにしてるのは自分か、と思った。



電話を切ってから、どれ位の時間が経ったろう。


ふと時間が気になって、腕時計に目をやると、日付が変わっていることに気付く。





「…まずいな」




零の時間は過ぎてしまったわけか。


ということは、下ではちょっとした騒ぎになってるのかな。




「ま、いっか」




ひねた笑いで、呟く。



零のサボり癖は昔から有名な話だ。






階段を駆け上る音がしたな、と思ったら続いて、




「零ー??」




俺を呼ぶ女の声がした。




「ねぇー!零ー?零ってば!あ、いた!」




見つかった。


俺は逃げるワケでも、そっちの方を見るわけでもなく、ただ空を見たまま、煙草を深く吸い込んだ。





「ちょっと、返事くらいしてよねっ。皆下で探してたよー?」




ぷりぷりと怒る小さな黒髪の女をちらっと見て、



「うるさい」



とだけ、返した。



「うわ、ひどっ!」



でも、この女はめげない。