「昔からそうだけど、零のやることはわかんねぇーわ。金は腐る程稼いでんだろうに」



やれやれ、という格好をして、わざとらしく溜め息を吐く崇に呆れる。



「お前に言われたかねーよ」



「いや、でも零には感謝してるよ?零がクラブにイベントだけでも戻ってきてくれれば、会場は華やぐからね」



舌をぺろっと出して唇を舐める崇は、最早たちの悪い狼にしか見えない。



崇曰(いわ)く、俺目当ての客を食いものにしてっているらしい。



どうぞご自由にって感じだ。



俺は何にも執着しないし、誰にも興味がないし、ただ、仕事をするまでだ。




「あ、そういやさ」



何かを思い出したのか、珍しく崇が真顔になった。

段々と陽が昇り始め、辺りは白みを帯びていく。



人がぽつりぽつりと目につき始めた。




「…何?悪いけどそろそろ、俺行かないと…」




言いかけて黙り込んだ崇を余所に、俺は腕時計で時間を確認する。



「あ、いや、その…」



慌てて崇は俺を引き止めるように言葉を繋げるが、歯切れが悪い。




「なんだよ?言えよ?」



俺は眉を顰めて、崇を見る。




「零の…父親代わりが…」



そこまで聞けば、崇が何を言わんとしているのかすぐにわかった。




「燈真に聞いたの?うん、死んだよ。」



別に言いにくいことじゃない。


胸の痞(つか)えなんてものもない。